2013年2月11日月曜日

行け、我が想いよ、黄金の翼に乗って

 ウィーンから戻った朝はさすがに起きるのが遅くなり、時計を見たら11:50。ホテルのレストランで一人食事をしながら、そのアイデアを思いつきました。

『せっかくだから、プラハのオペラも観よう』

 早速webで調べるとその夜は2つの劇場でオペラの上演が予定されていたのですが、ボックス席が残っていた国立オペラ劇場のチケットを取ることにしました。webでカード決済して、ホテルのビジネスセンターでチケットをプリントアウト。本当に便利な世の中です。
 
 2時すぎにホテルを出て地下鉄で劇場の最寄り駅へ向かいました。20分ほどでついてしまう距離です。開演まではまだ時間があるので近くの美術館を観たり、ヴァーツラフ広場を散策します。20数年前にここで民主化デモが行われ、ビロード革命が成立したのですが、プラハの人々の素朴でとても穏やかな人柄を考えると当然のことのように思えます。




















国立オペラ劇場














  
 開演は19:00ですが18:00くらいから劇場入口に観客が集まり始めます。しかし、ドアが開くことはなく、寒い中誰も文句を言わずに開場を待ちます。ヨーロッパらしいですね。 
 この日のプログラムはヴェルディの「ナブッコ」です。もちろん、予習してません。一体どんなオペラなのでしょう。それでは劇場の中に入ります。
 こじんまりしていて吹き抜けのホワイエこそありませんが、内装は豪華絢爛です。
 



















 昨夜のウィーンではすっかり舞いがってしまいオーケストラピットを見るのを忘れてしまいましたが、今夜はじっくり観察しました。意外と少人数編成です。なぜかドキドキします。
















 そして、劇場の中を見渡すと…これぞオペラ座。


























平土間(Parkett)の席の場合は案内係が席まで案内してくれ、お礼にその日のプログラムを買うという習慣のようです。右端に写っているプログラムを抱えた女性がその案内係です。
















 昨夜の"LA CENERENTOLA"はコミカルなオペラ・ブッファでしたが、今夜の"NABUCOO"は本格派でした。正直始まるまではプラハはウィーンに比べたらローカルだし、値段も安い(ほぼ同じ席で1/4)し、それなりかなぁなどと勝手な想像をしていました。

しかし、それは間違いでした。ごめんなさい。反省します。

 ウィーンのような現代的な演出はないものの、オーソドックスで練り上げられた舞台は安心して観ることができました。とにかく見せ方がうまい。群衆が登場する場面は滑らかで綺麗な動きがとても印象的でした。


















 歌手陣ではアビゲイル役のAnda-Louise Bogzaが圧倒的な声量と存在感を示していました。カーテンコールでは主役のナブッコ役の歌手より大きな拍手を受けていたくらいです。
Anda-Louise Bogzaの動画

 劇中で歌われた合唱曲が耳に残り、後で調べてみると「行け、我が想いよ、黄金の翼に乗って」という歌であり、イタリア第2の国家と呼ばれるほどに親しまれているそうです。確かにどこかで聞いたことがある気がしました。サラサラと流れるその旋律はタイトルそのものです。好きな歌がまた一つ増えました。


終演後、夜のヴァーツラフ広場を歩きながら考えました。

この世界は驚きと発見に満ちている。

音楽という深い森を歩く旅はこれからも続くのです。





2013年2月10日日曜日

"LA CENERENTOLA" in Wien

 職場の社員旅行でプラハに4泊するのを利用してウィーンへ足を延ばすことにしました。
目的はオペラを観るためです。オペラは秋から春がシーズンなため、今回は絶好のチャンスです。しかも、あのWIENER STAATSOPER (ウィーン国立歌劇場)です。でも、あくまでも社員旅行なので外泊はNG。果たして翌朝までにホテルの部屋に戻ることはできるのでしょうか。

ウィーンへ

 職場の同僚数人を誘ったのですが、反応なし。気ままな一人旅となりました。プラハからウィーンへは列車で4時間45分。ウィーンの建築も見たかったので朝一の列車にしました。ヨーロッパの長距離列車は発車直前にならないと番線が表示されません。4時にはプラハ本駅についていたので、発車ホームが決まるまで駅の中を散策です。
















4:39発のグスタフ・マーラー号!




早朝のホームはまだ真っ暗です
















グスタフ・マーラー号の車内
1stなのでゆったりしてますが、新幹線のように椅子は回転しません。
















窓の外をぼんやり眺めながら物思いに耽ります。
やはり列車の旅はいいものです。













ウィーンの建築

 定刻より10分ほど早くウィーン・マイドリング駅に到着。駅前でタクシーに乗り、ウィーン国立歌劇場まで15分でした.。帰りはこの時間を頼りに劇場を出なければなりません。列車の時間とオペラの終演時刻を考えると微妙です。

 
ウィーン国立歌劇場


















ケルントナー通り~グラーベン~コールマルクトを歩いてみました。有名建築や高級ブティックが建ち並んていてテンションが上がります。セレブ有閑マダムが闊歩する姿が似合う街並みです。

シュテファン大聖堂


















ハンス・ホライン:ハース・ハウス
学生時代に話題になった建物なので印象的でした。

















ハンス・ホライン:シュリン宝石店Ⅱ
























オットー・ワーグナー:ウィーン郵便貯金局
道に迷いながらやっと見つけたこの建物はどうしても見たかった近代建築の名作。
期待通りでした。


















オルトナー&オルトナー:近代美術館
ウィーンは一見美しく保守的でありながら、その背後に病的なもの、グロテスクなものを抱え込んでいるように感じます。もちろん比喩としてです。この美術館の展示を見るとそれがよく分かります。

















ヨゼフ・マリア・オルブリッヒ:セセッション館
オペラの開演までまだ時間があったので、冷たい雨の降るウィーンの街を一人あてもなく歩いていたら昼間タクシーの中から見たこの建物に出くわしました。やはりウィーンは謎めいています。















LA CENERENTOLA


6時を少し過ぎたころに劇場に到着し、この時のために用意したスーツの身なりを正して入口のドアを開けました。
























劇場は想像していたよりも小さく、とても密度の高い空間です。































 今夜のプログラムはロッシーニの"LA CENERENTOLA"。『シンデレラ』をもとにした物語です。正月休みにバルトリが歌うブルーレイで予習をしていたので聴きどころはわかっていましたが、超絶技巧でパワフルなバルトリに対して今夜のタラ・エロートが歌うアンジェリーナ(シンデレラ)は色白・ぽっちゃり・メガネ女子な風貌と相まって本来の弱気ないじめられキャラを上手く表現していたと思います。























時代設定は1950~60年くらい?
王子様役は自動車会社の御曹司で、最初は運転手に扮してお嫁さん探しに街へ出ます。
こちらもメガネ男子でなんかヨン様みたいでした。
































タラ・エラートの動画です。






今回はボックス席(PARTERRE LOGE)の最前列だったのでリラックスしつつも舞台に集中することができました。



FINALE~悲しみと涙のうちに生まれ

  プラハへ帰る列車は22:31に発車します。フィナーレの前に最後の舞台転換のために一旦幕が降りたのが21:55くらいでした。ここで席をたつべきか?最後まで観るべきか?決断を迫られました。『よし、最後まで観よう。列車に遅れたら、ウィーンのメリディアンにでも部屋をとればいい。なんとかなるさ。』 そして、再び幕が上がり、いよいよフィナーレです。花嫁姿のアンジェリーナは継父と姉達を許し、オープンカーに乗り込み、アリア『悲しみと涙のうちに生まれ』を歌い上げます。全神経を集中してこのアリアを聴き終わると時計は22:10でした。拍手と「ブラボー!」の歓声の中、カーテンコールを見届けることもなく、足早に席を立ちました。全力疾走でオペラ座の階段を駆け下り、ドアの外の車寄せで客待ちしているタクシーに飛び乗り駅へ向かいました。駅について発車ホームを電光掲示板で確認して、また全力疾走。なんとか発車5分前にホームにたどり着くことができました。そして、個室寝台車のベッドの上で、ウィーンを駆け抜けた一日を思い出しながらに眠りに落ちたのでした。