2012年12月16日日曜日

プロローグ

 小学生の4、5年生の時、ベートーヴェンの第九のLPを親にねだって買って貰った。もう手元にはないが、ヴァーツラフ・ノイマン指揮のチェコ・フィルだった。帯には「世界初PCM録音」 とあったと記憶している。新しい時代の到来を予感させるコピーだった。文字通り磨り減るまで聞いた。
 中学生の頃、ソニーからウォークマンが発売され、音楽を外へ連れ出せることに興奮したことを覚えている。
 高校時代にCDが発売され、やがてアナログ盤はCDに置き換わってゆくことになる。この頃から音楽はヘッドフォンで聴くものとなり、スピーカーの前で音楽に向かい合うことは少なくなった。
 今や名刺サイズのウォークマンでMP3の音楽を聞くのが当たり前になった。音質もバッチリだ。
 しかし、本当にこれで良いのだろうか。便利さや手軽さと引き換えに何かを見失っているような気がする。人生は短い。折り返し地点はもう過ぎたはずだ。今までたくさんの勇気と感動を与えてくれた音楽にこれからはもっと真面目に向き合いたい。
 ただ聞くだけの音楽であってはならない。そこから何を受け取ったのかが大切なのだ。

ノイマンの第九は東京でのライブ録音であった。amazonで探してもヒットしなかったので、CDでは再発されていないようだ。これまでにいろいろな指揮者の第九を聞いたが、今思えばノイマンの演奏はかなりテンポが遅く重厚な演奏だった気がする。wikiによるとノイマンはチェコのビロード革命においてスメタナの「わが祖国」を連日演奏し続けることで民主化運動に勇気を与えたのだそうだ。
 来年の2月にプラハに行く予定なので、もう一度ノイマンの演奏を聞いて勇気を貰うことにしよう。




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